このたび、
朱熹・呂祖謙編『近思録』を、
現代向けに再編集した書籍を Kindle で刊行しました。
原典に触れたことのある方ほど、
「どう扱えばよいのか分からない本」
という印象を持っているかもしれません。
『近思録』は、
教えを並べた書でも、
答えを与える書でもありません。
朱子学を体系的に説明する教科書でもない。
むしろこれは、
学ぶ者が「どこに立って考えるのか」を見失わないために編まれた本
だったのだと思います。
今回の編集では、
陽明学と対立させることも、
現代的な自己啓発に寄せることもせず、
「理に身を置く訓練の書」として
『近思録』をそのままの重さで置き直すことを目標にしました。
構成は、全編を通して次の三層だけです。
- 原文(漢文を保持)
- 平易な現代語訳(断定を避ける)
- 実生活に置き換えた喩え(結論を出さない)
読み手に何かを「教える」ためではなく、
考え続けられる状態を保つための配置を意識しています。
朱熹自身が後序で述べ、
清代の《四庫全書總目提要》が繰り返し確認しているように、
『近思録』は、
ここで学びを終えるための本ではありません。
むしろ、
ここから先へ進むための入口であり、
日用の中で立ち戻るための足場です。
急いで理解する必要はありません。
順番どおりに読む必要もありません。
「分かった」で閉じなくてもよい。
判断に迷ったとき、
言葉が少し引っかかる。
それだけで、この本は役目を果たしていると思っています。
すでに手に取ってくださった方、
気に留めてくださった方に、
編集者として、静かに感謝します。







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