明治期、勝海舟が語った談話をまとめた『氷川清話』には、
人生訓とも、処世術とも言い切れない言葉が数多く残されています。
それらは「こう生きよ」と命じるものではなく、
むしろ、割り切れない現実の中で
どう判断してきたかを、そのまま語った痕跡のような言葉です。
今回、
『勝海舟 現代のための三十則 氷川清話より』
という書籍をKindleで出版しました。
本書は、
勝海舟の言葉を現代語に“言い換えた本”ではありません。
また、教訓集や名言集でもありません。
「もし勝海舟が現代に生きていたら、
同じことを、どんな調子で語るだろうか」
そんな想像を編集の軸に置き、
『氷川清話』の中から三十の言葉を選び、
現代の読者が自分の判断材料として読める形に整えました。
理屈と現実のずれ。
言葉と行動の一致。
責任を引き受けるとはどういうことか。
人を用いるとは、どういう距離感なのか。
時代は変わっても、
判断に迷う場面の構図そのものは、
あまり変わっていないように思います。
各項には、
原文の流れを踏まえた補足と、
現代でどう読めるかという読みの手がかりを付していますが、
答えを決めることはしていません。
それは、勝海舟自身が
自分の言葉を「模範」や「正解」にしようとはしていなかったからです。
本書の最後には、
彼自身のこんな言葉があります。
読む人が、自分で考へる助けになれば、それで本望である。
この本もまた、
何かを信じさせるためのものではなく、
考え続けるための材料として、
静かに手元に残る一冊になればと思っています。







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